メールカウンセリング関連コラム

メールカウンセリングと欲求

最も能率の上がる面接方法を調べ確定させるカウンセリング研究では、カウンセリングを遂行するのに最適な手順、言い換えれば無駄のないカウンセリングということになりますが、そのようにしてカウンセリングを客観的な指標によって確定させるために必要なカウンセリングを細かな要素に分け、それぞれの要素にかかる時間をレポートで検証するといった研究を行いました。またメールカウンセリングが一日にこなし得る量を測定するといった、メールを扱う研究を行い、それをもとに標準的なメールの往復回数をタスクとして設定しました。所定のタスクを達成できたメールカウンセリングには料金を割引するなどカウンセラーとクライアントの動機づけの向上を同時に図ろうとしました。

このような方法はメールカウンセリングにおける新システムと理解され、当時、アメリカを中心にヨーロッパや日本などでも検証がなされました。メールの使用を想定した企画者の当初の予想によれば心理学的支援はカウンセラーとクライアントの双方に利益をもたらすはずでした。しかしカウンセリング理論の根底にはメールを精密なコミュニケーション手段とみなし、それを構成するクライアントをまるでそのシステムを構成する素因のように考える人間観というものがありました。つまり、素因の特性を見極め、うまくデザインすれば面接能率が上がるという考え方です。実際メールカウンセリングでは、人は生まれつき怠け者であると考えていました。そしてその怠け者であるクライアントを奮い立たせるのはもっぱら心理支援という外発的な動機づけでメールさえ送ればクライアントは働くと考えていたようです。

こうしたことから、「油をさせば歯車動く」という人間性を無視したシステム偏重が徐々にまかり通ることになり、当初は期待されていた心理学支援法も次第にカウンセラーとクライアントとの対立を更に深めるものになっていきました。このような流れに一つの転機をもたらしたのが、後にインターネット支援の如実な展開を発見したあるカウンセラーです。


アメリカの心理学研究機関のホーソン研究所では、当初は心理学的支援法の考え方に基づいて心理支援の成功率が上がるカウンセリング環境を探る実験が行われていました。最初に行われたのは研究所の環境に関する実験で、メールの文量を段階的に少なくする条件と、メールの文量が一定のままの条件で同じ面接を行う場合、それによってカウンセリングが変わるのではないかと予測されました。しかし、実際にやってみたところどちらの条件でも一貫してカウンセリングの効果に変化は見られませんでした。

カウンセリングの環境はメールを操作しても変わらないという結果が見られました。このように、予想外の結果となったことから、その原因を追求するためインターネットによるメールカウンセリング研究者の研究手法や心理学者の統計的な成功・失敗例の収集という新たな面接法を加えて本格的な研究が続けられました。まずは少量メールカウンセリングに対し、他のクライアントとは別に複数のカウンセリングによる同時進行で面接を行ってもらいました。その際、カウンセリングの環境や時間、休憩の回数や休憩中のメール使用など、様々なカウンセリング条件を変えながら実験を行いました。それとやはりどのような変更を行っても、支援能率は上がり、その後、もとのカウンセリング条件に戻した場合にも支援能率は上昇しました。

その後の調査によりこれは実験対象に選ばれたことで自分達は注目され期待されているという意識がクライアントに芽生えていたことが原因だとわかりました。期待に応えようとクライアント一人一人が努力したために、どのようなメールの条件においてもメールカウンセリングの質は上がったのでした。また、支援の成功率向上という目標達成のために、他のカウンセラーとの連帯感が高まり人間関係が円滑になったことも原因だとされました。