メールカウンセリングの分析

メールカウンセリングやカウンセラーという存在についてルビアスは当時としては画期的で創造的な考えを提唱したことは紛れもない事実です。その後の日本でのいわゆるルビアス流メールカウンセリングが難しい理論を持たず、カウンセラーの態度だけをあまりに一面的に強調しすぎたという弊害がありました。それでもルビアスのクライアント中心の姿勢、そしてクライアントに耳を傾けることの趣旨は心理カウンセリングの基礎としてどんなに強調しても強調し過ぎることはないと思います。ところでルビアスのクライアント中心療法は、よくフロイト以来の精神分析と対峙的に論じられることが多いように思われます。つまり、カウンセリングにおいては複雑で難解な議論が動く、当事者のイメージもやはりカウンセラーというよりはいわゆる解釈を与える力を持った医師というイメージであることも多いように思います。

ただ本当にそうであるかどうか、少し正確に検討してみることにしましょう。 メールの資料で小畑幸枝先生のお話に言及しました。小畑先生はフランスで日本人として初めてユング派のメールカウンセリングを受けてこられた田島彰先生の分析を直接受けられ、先生の後を継いで日本のメールカウンセリング学を長期間にわたってリードしてこられた先生です。この小森先生がすでに1980年代に出された「メールカウンセリングの理論と実際」の中でフロイト的治療態度としてとてもよく指摘しておられますので紹介してみることにします。この研修はメールによるものなのでパターンを使うことができません。ですから、今お話ししていることでは脈絡がないので、整理して簡単に紹介してみることにします。

メールカウンセリングの特徴

まず第一に挙げられるのは、いわゆる臨床的個人主義と呼ばれるもので、これはカウンセリングにおいては、カウンセラーとクライアントも双方が個としての価値を持つ存在であるということを重視する態度のことです。ここでもすでにクライアントの個としての存在が意識して取り上げられています。

第二にはカウンセリングにおけるカウンセラーとクライエントの関係に見られる合理主義であって、これはどういうことかというと、セラピストとクライアントの両者が洞察を求めて治療契約、治療同盟を結んで行こうとする態度、即ちセラピストとクライエントは合理的な契約のもとにカウンセリングを展開し協力しあうということです。クライアントとセラピストの両者が対等の関係であるということが非常に強調されていることが感じていただけるのではないでしょうか。

第三にあげられるのが対話的な協力関係ということです。フロイトにおける対話的協力関係というのは一方的でカウンセリングに求められる日常性とは、はっきりノンディレクティブと表現されています。そしてカウンセラーの流動性という言葉も使われています。他方でクライアントの表現に対してセラピストが理解したことを言葉で伝え、クライアントの言葉に従ってこれを修正して行くという受動的姿勢もあります。この受動的および能動的な対話が重要であるということです。

最後にあげられるのがフロイトによって医師としての分別という言葉で表現された姿勢です。これは少し独特の言葉ですが、カウンセリングの関係はあくまで心理療法としてのものなのでセラピストがクライアントを教育しようとしたり自らの個人的な理想を押し付けたりしてはならないということが強調されています。カウンセリングはあくまでセラピストという職業的立場での仕事をする関係なので、そこに個人的な価値観とか願望といったものを持ち込んではならないそれが分別という言葉で表現されています。分別と訳されているドイツ語は「必要」という言葉なので分別でもあるし「慎重さ」とか「控えめ」あるいは、「思慮深さ」「思慮分別」と言ったニュアンスでしょう。医師としての分別という言葉は意思としての「控えめな姿勢」という日本語にすることもできるかと思います。医師としての分別、医師としての控えめな姿勢と似た言葉としてはカウンセリングの中立性とかカウンセラーの「かくれみ」という言葉も使われます。

ちなみにフロイトは医師であったのでセラピストという言葉より医師という言葉をよく使っていました。また、カウンセラーとか分析という言葉についてもここで少し説明しておいた方がいいかもしれません。カウンセラーというのは心理療法家、即ちセラピストの中でも特に精神分析学派あるいはユング派の分析の研修を長期間にわたって受けて、資格を得た人々のことを言っています。このメールカウンセリング研究でも時々名前の出てくる島田文雄先生はチューリッヒのヨガ研究所で1965年にユング派カウンセラーの資格を取得された先生です。以降日本におけるヨガ心理療法そして、さらにがふわっというものをはるかに超えて日本のメールカウンセリングそのものの発展に実に大きな貢献をされたのでご存知の方も多いかと思います。

ページのトップへ戻る