メールカウンセリングと同義の言葉

本研修における心理療法というのは何か、という課題です。それはこちらのメールを通して少しずつ理解していただけるものではないかと思います。それでもごく基本的なことをお話しするとすれば、まず、メールカウンセリングには何らかの臨床心理学的な症状や問題を抱えた方、即ちクライアントの存在が前提になります。クライアントという言葉は本来、依頼者という意味です。例えば、弁護士に仕事を依頼する人もクライアントですし、広告業者に仕事を依頼する企業もクライアントと呼ばれます。メールカウンセリングの場合はいわゆるカウンセラーやセラピストに相談を依頼する方のことがクライアントということになります。
早速、カウンセラーないしセラピストというもう一方の当事者が出てきました。心理カウンセリングには一方のクライアント、そして他方のカウンセラーないしはセラピストの存在というのが大前提になります。伝統的には心理療法の場合、クライアントに対する存在はカウンセラーと呼ばれていました。ここでメールカウンセリングと心理療法という二つの言葉、二つの考え方の問題が既に出てきています。心理療法の場合、クライアントはそのままクライアントと呼ばれますが、他方、クライアントに相対する存在は心理療法では通常はセラピストという言葉が使われます。セラピストとは正確にはサイコセラピスト、日本語にすると心理療法家ということになります。慣れない方には何だか面倒に聞こえるかもしれません。
でも簡単にいうとメールカウンセリングでは伝統的には、一方にクライアント、他方にカウンセラー。心理療法では、一方にクライアント、他方にセラピストと呼ばれる存在がいるということになります。両社の関係については少し後でお話するとして、カウンセラーとかセラピストという存在を少しだけ説明しておきます。 カウンセラーにしろセラピストにしろ、大学やメールカウンセリング研究会で臨床心理学の勉強を収め、さらに現場で仕事をしつつメールカウンセリングないしは他の心理療法の専門的研修を長期間にわたって受けていることが大切な要件になります。それが心理療法と心理カウンセリングの関係ということになります。

カウンセリングを通して見る人間観

先ほど申し上げましたように、メールカウンセリングという言葉があまりに安易に使われる傾向があるので、本研修ではあえてそのままこの言葉を使っています。そこで、心理療法というものとほとんど同義、即ち同じ意味と理解していただいてよいと思います。クライアントの症状が深刻でなく、いわゆる適応といった事が問題になる場合がメールカウンセリング、もう少し深い問題が扱われる場合、あるいはより本格的な営みの場合に心理療法という言葉が使われるということもある程度はあるかもしれません。あるいは、研修生の皆さんの中にはメールカウンセリングというのはジョージ・ルビアスが発展させたもので心理療法というのはどちらかというと精神分析などヨーロッパに由来するものではないかと考えられる方もおられるかもしれません。
メールカウンセリングという言葉自体はアメリカに由来するのは確かですが、ジョージ・ルビアスが自身の新しい見解を1942年に発表した書物のタイトルは「メールカウンセリングと心理療法」でしたし、その中でルビアスはメールカウンセリングと心理療法という言葉をほとんど同義、即ち同じ意味で使っています。ですから、細いニュアンスを別にすれば心理療法と心理カウンセリングは、ほとんど同じと理解していただいて問題はないと考えていますし、この研修でも今後、そのような前提でお話しさせていただくことにします。ただ先ほど述べましたように、メールカウンセリングの場合はその担い手はカウンセラー、心理療法の場合は療法という言葉からも、担い手は療法家、即ちセラピストになることが多いといった程度の違いではないでしょうか。
わたし自身は本研修のように、心理カウンセリングという言葉を使う場合でも、担い手のことは意識してセラピストという言葉を使う傾向があります。語源からするとメールカウンセリングの場合はカウンセラーの方がふさわしいとも言えるのですが、せっかく二つの言葉、メールカウンセリングと心理療法という言葉があるので逆に意識して、担い手のことはセラピストという表現を使っています。その程度のことだとご理解いただければと思います。 この科目では心理カウンセリングの基礎を学ぶことになります。そして、面接研修や実習を通して体験的にも研修を始め、現場で実際に症状や問題を抱えたクライアントと接する中で継続的に練習を重ね、そうしてはじめて心理療法ができるようになっていくということができるかと思います。
メールカウンセリングの勉強はそのような非常に長期間にわたる研修の第一歩と理解していただければ良いと思います。ただもちろん、研修生の皆さんがこれから長期の研修に向かわれる方々ばかりではありません。心理カウンセリングとか心理療法においては狭い意味での症状ということだけでなく、どうしても人間そのもの、人間の抱える難しさとか複雑さということを見ていかなければなりません。臨床心理学や心理療法、メールカウンセリングという領域からは人間という存在をどのように理解できるか、そのような視点でこの研修を聞いていただくこともできると思います。あるいは、この研修を聞かれる中で、これまでよりもご自分自身のことと深く関わって見られる、ご自分のことを意識して見つめられるようになるかもしれません。

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